デンマークオープンスーパーシリーズプレミア2017 山口茜 準決勝観戦記

女子シングルス準決勝 山口茜(世界ランク5位) 10-21 21-18 21-19 チェン・ユーフェイ(中国:世界ランク10位)

この試合、ラリーの主導権は終始チェンにあった。序盤を見る限り山口が惨敗するかに見えた。だが山口は技術とメンタルの引き出しを全開にし、見事に勝ち切った。

チェン・ユーフェイ。1998年3月生まれの19歳。すでに誕生日を迎え20歳となった山口と同学年にあたる。

両者のこれまでの対戦成績は、今年6月のオーストラリアオープンまでいずれも山口の完勝による3勝0敗。ところが8月の世界選手権3回戦ではチェンが21-18、21-19で初勝利。

直近の対戦で、しかも格別な重みのある世界選手権で敗れている山口。チェンは今後自分のキャリアに多大な影響を及ぼしていくであろう同級生。さらにチェンはこの大会、1回戦ではあのプサルラを2-0で下し、準々決勝では日本の佐藤冴香を相手にせず完勝。

山口にとってはいやな材料がこれでもかと揃った、実に重たい戦いが始まった。

序盤、ラリーの主導権は終始チェンにあった。

山口独特の切れ味鋭い攻撃的ショットに対し、チェンはいずれも難なく対応。むしろそれらを早いタッチで軽々とさばきながら山口を次々と追い込んでゆく。その様子はあたかも山口が地獄の猛特訓さながらのノックを浴びているかのようであった。

この地球上にあの山口をラリーでこれほど追い詰める女子がいたのか?驚きの連続であった。

チェンのフットワークとラケットワークは軽快且つ丁寧。ラリーにおける力の抜きどころが実に匠である。コートが狭く見える。シングルスを楽にやっているよう見える。その様は母国の英雄、リン・ダン、を思い起こさせる。ゆったりにも見える足の運びはチェン・ロンを彷彿とさせる。もちろん少なからずその影響は受けているのであろう。

山口の心は何度も折れかけているように見えた。コーチ席から聞こえる激、その内容はもはや細かい戦術論などではない。「気持ち!気持ち!」

敗色ムードも漂い始めた2ゲーム目中盤。山口はハイリスクなきわどい球を連発。スピードを上げていく。この戦術は「開き直り」からしか生まれない大きな賭けであったと思う。

両選手は観客の度肝を抜くスーパーラリーを展開。観るものをどきどきさせるようなギリギリの攻防はデンマークの観衆の心をわしづかみにした。会場の空気は韓国オープンで決勝で見せた奥原ープサルラの名勝負の時と同じ空気になった。会場は感動に包まれ、視線はこのコートに釘付けとなった。

もしかしたら多くのファンは誤解をしているかもしれない。

粘りの奥原、攻撃力の山口、と。

確かに山口の攻撃力は非凡だ。しかしその粘り強さ、気持ちの強さは決して奥原に引けを取らない。寡黙だからわかりにくいのかもしれないがこの人は単なる天才ではない。根性の人、なのだ。

まだ若いこの二人。あと5年でも10年でも、現役でいることもできるだろう。この地獄の意地の張り合いはこれからいったい何回続いていくのだろうか。

我々ファンにとってはまた一つ、奥原ープサルラに勝るとも劣らない、素晴らしい黄金カードが誕生した。


Recent Posts